「ロレックスだからしたというよりも、最も身近にあった時計がロレックスだった。そういうことではないでしょうか」キューバで取材したとき、当時の戦友や部下たちはそう口を揃えたものだった。一方、最近のカストロ議長の左手首には、カシオのGショックが巻かれていることが多い。1970年代に隆盛したクォーツに圧されて危機に瀕していたスイスの高級機械式時計産業だが、80年代になって息を吹き返す。90年代に入ると、今度は世界的な高級ブランド再編の余波を受けて、時計業界も再編の時代に突入する。その結果、オフィチーネーパネライやヴァシュロンーコンスタンタンはカルティエやダンヒルを擁するリシュモングループの、オメガやブレゲはスウォッチグループの、ゼニスやタグーホイヤーはLVMHグループの傘下となった。しかしロレックスは静かな巨人として、独り泰然たる姿勢を変えようとはしない。90年代末、スイスのメディアはロレックスがスイスにあるいくつもの金融機関の大きな株主であると報じた。それほどロレックスは磐石なのだ。